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アメリカの教科書などでよく引用される表現を借りれば、企業は、いかなる理由によっても、いや理由が全くなくても、解雇を自由に行う権利を有する。

それが随意的雇用の原則だ。 いかなる理由によっても、であるから、極端な話、「オマエの顔が気にくわないからクビ」でもよいのだ。
これでも相当にヒドイが、そもそも理由がなくてもよいというのだから、「とくに理由はないんだけど、なんとなくオマエはクビ」でもいいということだ。 なんて恐ろしい考え方だ、と思うかもしれないが、その代わり労働者の方だっていつでも、別に理由がなくても自由に辞められるんだからおあいこだろ、という発想である。
アメリカでは、年齢差別禁止法その他の立法により、雇用のあらゆる局面(採用、配置・昇進、賃金、解雇……)におけるあらゆる差別(性差別、人種差別、出身国に基づく差別、障害者差別……そして年齢差別)が厳しく禁止されている。 しかしそれ以外の場合、すなわちそれらの「差別」にあたらない場合には、随意的雇用の原則により、解雇は基本的には自由である。
「女性だから」「黒人だから」「年寄りだから」というようなステレオタイプな偏見に基づく差別はできないが、「仕事ができないから」「期待したほど成果を上げてくれないから」などの理由での解雇を妨げるものはない。 一般にアメリカでは、差別がいけないのは、その個人の能力をみないで、女性、黒人、高齢者など、たまたまその人が属する集団だけをみてその集団の固定的なイメージ(たとえば、女性はどうせ早く辞める、高齢者は頭が力夕くて使いづらい、など)だけに基づく判断をするからである、と考えられている。
つまり差別を禁止する法のウラには、その人個人の能力をみてあげなさい、というメッセージが込められているのだ。 その帰結として、職務遂行能力の不足・欠如という理由での解雇はむしろ当然と考えられている。
要するに、日本の定年制のような仕組みは年齢に基づく差別にあたるので実施できないが、かといってアメリカで中高年の労働者を辞めさせることが全くできないというわけではないのである。 60歳の労働者に、「60歳だから辞めてくれ」とは言えないが、55歳の労働者に、「仕事の能率が落ちてきたから辞めてくれ」と言うことも(少なくとも理論上は)可能なのである。
しかも、「仕事の能率が落ちた」かどうかは企業側が主観的に判断してよい。

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